草創期の新聞は御用新聞と民権派新聞に分かれ、激烈な言論戦を戦わせていた。そのさなかに西南戦争が勃発した。新聞はうろたえた。戦争を報道するという意味と方法がつかめなかったからである。読者の声に突き動かされるままに新聞は戦争の波にのみこまれていく。この報道合戦のなかで二人のヒーロー-ひとりは『東京日々』の福地櫻痴、もうひとりは『郵便報知』の犬養毅-を生んだ。二人の抜きつ抜かれつの取材合戦を縦軸に、明治新聞人のもう一方の雄・『朝野新聞』の成島柳北の沈潜ぶりを横軸に三つ巴の新聞人の格闘ぶりを描き出す。戦争報道はどうあるべきか?客観報道とは何か?権力との緊張関係はどうあるべきか?そのとき日本の新聞はジャーナリズムに生まれ変わった。
「BOOKデータベース」より