近代日本という時代に個人や集団がアイデンティティを見いだすために、時代に即応した感性や感覚のあり方が用意され、人々はそれを身につけることを要請された。ときに教育され、扇動・動員され、あるいは置き忘れられていったさまざまな感性。その葛藤と順応の様相を文化史のなかで検証し、近代における公共空間と個人との関係や、メディアによって変容されていった個人の主体の問題を浮かび上がらせる。感覚の抑圧と近代主義、観察する技術と視線の偏向、文学史における性と生、ヒステリー観の変遷、戦時雑誌の公共性、ポートレートとジェンダーの問題など、これまで自明視された枠組みを揺さぶり、メディア論・文化研究の新しい視角を提示する刺激的な論集。
「BOOKデータベース」より