突然の再会に、チェルシーの声は震えた。「しばらくね、ラフ」「元気そうだな」久々に会う夫は相変わらず自信に満ちて見えた。貴族の血筋と巨万の富に加え、彼には女性を引きつける魔力がある。若かったわたしも、いとも簡単に彼のとりこになった。そして人形のように操られ、権力争いに利用されたのだった。真実を悟ったわたしが家を飛び出してから、もう2年。それ以来、彼は社交界で華やかな恋の噂をまきちらしていた。でも目の前にいる彼の薬指には、まだ指輪が光っている-愚かな期待に、チェルシーの胸は激しく高鳴りはじめた。
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