鏡は現実の世界を映し出す。ローレンツは、ヒトの心も現実の事象を映し取り認識するものとして鏡になぞらえ、すべての鏡に物理的実体として裏側・背面が存在するようにヒトの心にも背面があるとし、その背面である認識システムに目を向ける。人間の行動の基礎となる五官から中枢神経系までを含めた人間の全認識装置とその機能を、アメーバーやゾウリムシの行動を始めとして、最終的には人間の社会的営みにまで至る"生きたシステム"全域における解明を試みる。ノーベル医学生理学賞を受賞した20世紀を代表する知性による、総合人間哲学を目指したきわめて野心的な試み。
「BOOKデータベース」より