長野県下の湖畔の町、射水で両大関といわれる名家の玉造家と矢部家とは先祖代々に亘る仇敵の間柄であった。その射水に向かう列車の中にはかの名探偵・金田一耕助が、お釜帽から蓬髪をはみださせたいつに変わらぬ衣装で、大いなる好奇心をかき立てられていた。なぜなら、"来てはならぬ"…という一種の脅迫状を受けていたからであった。矢部家の次男英二が玉造家の娘朋子の手で鐘乳洞の中で殺されるという事件が起きたのは二十三年前のことであったが、その朋子の無実を明かすべくブラジルからコーヒー王の養女となって"新シンデレラ姫"といわれる日系二世の鮎川マリなる女性がやって来ていた。鐘乳洞の中でふたたび次々と殺人が。頬に傷を持つ男とは。金田一の推理は…。
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