連合艦隊はミッドウェーで壊滅的な敗北を受け、ソロモン方面の戦局もおもわしくなかった。昭和十八年の正月、亜細亜通商の新社長に就任した彦坂と交際を続ける加多瀬の妹、範子は、数日後、凶弾に斃れることになる作家の古田厳風から兄に宛てた手紙を渡されていた。それは「国際問題研究所」の導師の予言が抹消されつつあることを訴えた異常きわまりない内容だった。一方加多瀬自身の脳裏には、砂に侵食されたヴェネチアの異景が巣くっていた…。戦争小説、ミステリー、恋愛小説、そして…。日本が生んだ、ジャンルミックス小説の大傑作。
「BOOKデータベース」より