ある村に、「牛女」と呼ばれる女が、男の子と二人で暮らしていました。あまりに背が高い大女なもので、いつも首を垂れて歩きました。力も、ほかの人の幾倍もあって、石運びなどの力仕事をしていましたが、性質はいたってやさしく、涙もろかったので、そう呼ばれたのです。女は耳が聞こえず、口がきけませんでした。そのうえ、男の子には父親がありませんでしたので、男の子のことをいっそう不憫がり、大変にかわいがって育てました。もし自分が死んだなら、何かに化けてでもでてきて、子供の行く末を見守りたいと思っていました。そして、実際、女は、病気になって死んだあと、冬山に雪形となって現れたのです。
「BOOKデータベース」より