現代カナダ文学を代表する作家アトウッドの最高傑作(ギラー賞受賞)。一八四三年にカナダで実際に起きた殺人事件に題材を求め、入念な資料調査をもとに仕上げられた作品。若くて類まれな美貌の主人公グレイスは女悪魔・妖婦だったのか、それとも汚名を着せられた時代の犠牲者だったのか。十六歳で事件に関わり約三〇年間服役した、同国犯罪史上最も悪名高いと言われている女性犯グレイス・マークスの物語である。記憶の信頼性とアイデンティティの揺らぎ、人格の分裂、夢、性と暴力をはじめとする人間存在の根源に関わるテーマを、多彩な小説手法を駆使しながら、大きな物語に描き上げた力作。
「BOOKデータベース」より