千社札は、江戸の美学である粋と洒落の精神が生んだグラフィックデザインです。同好の士が札の交換や品評をする「納札交換会」の場で互いに競い合いながらすばらしい作品を生み出していきました。浮世絵師による斬新で卓越した構図に御家流から発生したバイタリティ溢れる江戸文字を融合させ、躍動するイメージを刻々と造形する彫師の刀を生かし、自由で華麗な色彩を駆使する摺師のバレンさばきを助長して、庶民文化としてのオリジナリティを形成したのです。広重や英泉といった浮世絵の巨匠も大いに手掛けた千社札。本書収録の約400点の優品によって花のお江戸の知恵と遊びに魅了されることでしょう。
「BOOKデータベース」より