1928年、ライン連邦バイエルン王国に突如現れた奇妙な少年。穴の中に一人で暮らし、言葉もほとんど知らなかったこの孤児は、数人の養父の手で教育を施されるが、五年後、謎の男に暗殺される。少年は果たして何者だったのか?漂泊の王子か?稀代の詐欺師か?裏返しのエディプス物語として稀代の怪事件を読み解き、その謎に迫るスリリングな評伝。
「BOOKデータベース」より
1828年、ライン連邦バイエルン王国に奇妙な少年が出現した。穴のなかにひとりで暮らし、言葉もほとんど知らなかったこの孤児は、数人の養父のもとで教育を施されるが、五年後に何者かによって暗殺されてしまう。この少年は果してだれだったのか?著者は新たな視点からこの謎に挑戦し、正体不明の少年の生涯の秘密を推理しようとする。すべての点で確たるアイデンティティを欠いたこの捨て子は、体制に安住した人々にとっては、異物であり、危険きわまりない存在であった。著者はこの点に、主観や秩序を形成する言葉と実存の本質的な問題を見いだし、また少年の謎の生涯に、裏返しのエディプス物語と、捨て子の時代ともいうべき現代に氾濫するカスパール・ハウザー状況の祖型を読みとり、家族神話の崩壊、父親なき社会の予言者として少年を位置づける。
「BOOKデータベース」より