戦後世界でアジアほど巨大な変貌を遂げた地域はない。「陸のアジア」では朝鮮戦争やベトナム戦争が勃発し、米中対立がその背景になったのに対し、「海のアジア」では米中に加え、帝国の威勢を保つイギリスと、経済的「南進」を試みた日本が重要な役割を果たすことになった。しかし海域アジアはそうした国々の思惑を越えて、世界で最も経済的活力に溢れる地域へと姿を変えた。アメリカの冷戦戦略やアジアにおける大英帝国の解体、そして「中国問題」の台頭という、アジアの現在を形作った劇的な時代における日本の密かな航跡を描き出し、ふたたび政治の時代を迎えつつあるアジアの行方を展望する。
「BOOKデータベース」より