1968年の秋、朝日新聞の演劇担当記者となった著者は、蠕動する日本現代演劇の勃興期に立ち会い、次々とほとばしり出る新しい才能をつぶさに見た。天井桟敷館のこけら落としの取材で初めて会った寺山修司。35年を超える長いつきあいのなか、驚くほど変わらない「おさな心」を保ち続けている唐十郎。演劇記者としてのみならず、編集者としてもつきあった井上ひさし…。また「女優を続けるなら恋愛はしても結婚はしないほうがいい」と周囲に語っていた杉村春子や「巨漢のカリスマ」千田是也の思い出から、ピーター・ブルック、タデウシュ・カントールまで、世界に輝く才能に触れた経験をつづりながら、時代を映し、時代の感性を牽引する「演劇」という芸術を形作った人々の肖像を浮き彫りにする。
「BOOKデータベース」より