「大量破壊兵器」という大義が崩れても、イギリスはなぜ、卑屈なまでにアメリカの戦争政策の後を追うのか。ブレアを戦争に駆りたてたのは、冷戦後の世界秩序のなかで再び覇権を握ろうとする"大英帝国"への壮大な野望だった。国内では、保守党対労働党の対立軸が崩れるなか、ブレア流社会民主主義に率いられて軍事大国をめざす「ニュー・レイバー」、議会を軽んじて国民への情報を操る首相の出現など、政治変化が加速している。外交では、米欧協調への指導権を模索しながら、かえって独仏との溝を深め、対米外交に軸足を置くしかないブレア外交の苦渋が続く。対米軍事追随、議会や内閣の空洞化と官邸権限の拡大など他国のこととは思えないイギリスの内政と外交の現状をイギリス政治研究者が多角的に分析する。
「BOOKデータベース」より