二十世紀西欧を代表するアイルランドの作家ジェイムズ・ジョイスは、現代文学の前衛として、新しい文体を創り出し、小説形式の革新を図って表現の可能性を追求した。ジョイス以後の作家はみな彼の影響を受けていると言ってもいいだろう。貧困、重い眼病と深酒、娘の狂気などに苦しみながら、大陸を放浪しつつも常にダブリンを舞台に、精力的に小説を書き続けた。そこに描かれた宗教、植民地支配、民族主義、ユダヤ人問題、文芸、愛と性などは、なお今日の問題として重要である。本書では、ジョイスの生涯と主要四作品、猥褻裁判を含めた文学的評価を簡潔に紹介し解説する。「難解」といったイメージを覆す、なにより「ジョイスを楽しむ」入門書。
「BOOKデータベース」より