本書は、著者がこの十数年ほどのあいだ、折あるごとに発表してきたイヴ・ボヌフォワにかんする論文や試論を「風景」というテーマのもとに編み直したものである。各章を結びつけているのは、「風景」という一点であり、詩的言語によって世界とわれわれとの関係の修復を試みる詩人が描き出すさまざまな風景がそこには現れてくるだろう。それらは、ドゥーヴの死によってつくり出された不毛な世界であったり、夕暮れ時や夜空を描いたものであったり、河や海の風景、花盛りのアーモンドの樹の下で戯れる子どもの描写、雪景色などじつに多様である。本書はそうしたざまざまな「風景」に注目しながら、そこにあらわれたボヌフォワの世界観、言語観、芸術観などを探る、いわばテマティックな考察である。
「BOOKデータベース」より