本書の執筆時に、コクトーは五十七歳だった。第二次大戦が終結して間もない、占領下の陰惨な記憶も鮮やかな時点で、自身の死を意識しつつ書かれた本書は、ラディゲ、サティ、プルースト、ディアギレフら、その多くは世を去っている親しい友人たちの的確で魅力的な人物論がちりばめられ、エスプリにみちたコクトーの姿と透徹した芸術観が浮かびあがってくる。「死について」「言葉について」「美について」「線について」など、「射撃姿勢をとらずに凝っと狙いを定め、何としてでも的を射抜く」というその手並みを味わいながら、読者は、コクトーの真摯さとそこに寄り添っている孤独の深さに導かれることだろう。
「BOOKデータベース」より