多くの言語には与える行為と取る行為を、慈悲と貧欲を、慈善と所有欲を、同時に意味することばがある。愛という語がそれである。自己を思う心の極致を指して愛と呼び、「他者」を思う心の極致を指して愛と呼ぶ。フィンケルクロートはE.レヴィナスの著作に触発された(思索の助けを借りて)、数々のできごと(悲劇)を経験した20世紀という時代-世界大戦、ナチズム、アウシュヴィッツ、集団虐殺、核兵器、テロ、失業-、隣人愛という観念が幻想にすぎなくなった時代に、「他者」とはだれかを問い、「他者」との倫理的関係を導き出す思想を考察する。
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