たがいに伴侶をなくした男と女が、死者を悼む万霊節の日、花屋の店先で出会う。赤錆色のアスターを買い、墓地をめぐり、一緒に茸を食べる。こうしてアレクサンドラ(ポーランド人女性)とアレクサンダー(ドイツ人、美術史教授)の恋は始まった-。舞台はダンツィヒ、時は1989年11月2日。実にベルリンの壁の崩壊は一週間の後。ドイツ再統一、湾岸戦争、環境破壊、追放の世紀への考察、老境に入ったグラスの筆は、ふたりの恋物語の背後に、みごとにヨーロッパと人類の未来を、芸術的なまでに描き切る。
「BOOKデータベース」より