自伝を定義することは可能なのか?自伝と他のディスクールを区別するものは一体、何か?この問いに答えるべく、本書において著者は、先ず、自伝テクスト読解の際の、テクストと読者の契約様式としての「自伝契約」という概念を探究の基軸に据え、自伝ジャンルへの抱括的な理論的考察を推進する。一方では、ルソー『告白』第一巻の複合的構造の分析、ジッド『一粒の麦もし死なずば』のもつ言表行為のレベルでの曖昧さ、サルトル『言葉』の「意味」が支配する物語順序、レーリスのエクリチュールにおける詩と自伝の漸進的統合、などの自伝を巡る諸問題を、テクストに密着しつつ、解き明かしてみせる。ジャンルとしての自伝に記号論的・物語論的方向から肉迫する、自伝研究の記念碑的大著。
「BOOKデータベース」より