混沌と破壊の支配するヨーロッパの荒野をひとりゆく、われらが<ロケットマン>タイローン・スロースロップ。あるときは亡命船アヌビス号で乱交パーティに加わったり、またあるときは闇商人の一味と共に旧ロケット基地を急襲したり、海辺の町では豚の英雄プレハヅンガに扮して大暴れ。元天才映画監督にして神出鬼没の闇商人<跳ね駒>、淫らな銀幕の女王グレタ・エルトマンとその娘ビアンカ、アフリカ・ヘレロ族の<黒の軍団>を率いるエンツィアーン、彼を追いかけるロシア人の異母兄弟チチェーリンとそのまた後を追うブロッケンの魔女ゲリー、<ゾーン>各地で彼と出会い、通り過ぎてゆくさまざまな人々。ロケットと自分自身の謎を追い求めるロースロップの偏歴は続く。一方、ロンドンでは<組織>に対する<反勢力>が結成され、抱腹絶倒奇妙奇天烈な反撃が開始された。いくつもの挿話を積み重ね、過去へ未来へよろめきながら、物語は究極のゼロ・アワーへと進んでいく。発表以来、轟々たる賛辞と非難の嵐をまきおこし、いまだ20世紀アメリカ文学の極北に屹立し続ける謎の天才作家トマス・ピンチョンの全米図書賞受賞作。
「BOOKデータベース」より