痛みはよくからだの警報信号といわれるが、それだけが痛みの役割ではない。警報信号として役立たず、苦痛のみを与える痛みがあり、また、からだのなかに原因となる病気や傷害がないのに、本人が痛みを訴えつづける「慢性痛」という痛みもある。痛みは生理的な現象であると同時に、「心」や人間性にかかわる複雑な性質をもっている。痛みをなくすことは治療の第一の目的であるのに、痛みは現代医療のなかでいまなお放置され、誤解されている。痛みの正確な診断や適切な治療は、まず痛みの本質を知ることから始めなければならない。
「BOOKデータベース」より