女人禁制を掲げる諸寺には、さまざまの女人に関する伝承がある。その伝承は主として寺辺や山麓周辺の里近くに多く見られる。寺院と女性とは、どのようなかたちでかかわっていたのであろうか。本書は、古代末〜中世初期の、女性と仏教とのかかわりあいの姿を、史料に即して具体的に描き出す。そこに見いだされるのは、国家祭祀にかかわって女性排除が展開する様相であり、また、里坊にあって僧の生活を支えながら後生を祈る、僧の母や妻たちの姿であり、そして、きびしく女性をしりぞけていたはずの日本の宗教が<女の力>に多くを負っていたありさま、である。
「BOOKデータベース」より