移民や難民の受け入れはどこまで可能か。何の留保や制約もなしに、異邦人=他者を歓迎するなど可能なのか。今日さらに切迫したものとなったこの問いにデリダが挑む。現代では、よそからやってきた他者を「私」の空間へ招き入れるという古典的な歓待の構図が崩壊しつつある。こうした歓待する側の自己意識や権力を前提とした条件付きの歓待に対し、デリダはプラトン、ギリシャ悲劇などを参照しつつ、無条件の歓待の諸相へと目を向ける。この遡行が揺さぶるのはヨーロッパを基礎づけてきた歓待の精神そのものであり、その根源的な(不)可能性にほかならない-。後期デリダ入門にも好適の一冊。
「BOOKデータベース」より