1990年、日本軍「慰安婦」(性奴隷制)問題が、韓国の尹貞玉梨花女子大学校教授によって提起され、韓国挺身隊問題対策協議会が結成された。日本の市民運動もこれに呼応し、日韓の女性連帯運動が開始される。日本政府は、文書がないことを理由に、日本軍も政府も、「慰安婦」問題に関与してこなかったと主張してきた。しかし問題解決を迫る勢いが国内外で強まり、政府としても何らかの措置を講じる必要が生じた。このためつくられたのが女性のためのアジア平和国民基金(略称「国民基金」のち「アジア女性基金」)であった。本書は、この「国民基金」を次善の策と考え一定の評価を与え、これをもって解決とする多くの人びとに対して、これでは真の解決策にはならないことを資料的に跡づけようとしたものである。
「BOOKデータベース」より