市場に現れてこない価値や、文化財の周辺で生じてくる価値も含めて、どの程度かを推定することができれば、こういった様々な利害関係を適切に把握し、どの程度の規模の支援が必要なのか、あるいは妥当なのかがわかるのではないだろうか。さらに、便益の種類や受益者を特定できれば、より適切かつ持続的な支援のシステムを考察できるであろう。もちろん、文化財が持つ固有の価値そのものは、直接計測することは困難である。しかしながら、この価値を維持、保存することによって得られる便益を、何らかの形で推測することができないだろうか。この試みが本書の各事例研究である。
「BOOKデータベース」より