初めての許されぬ恋に揺れ動く多紀の心。大学医学部の教授という社会的地位をも顧みず多紀に傾いてゆく柚木。二人が初めて津和野に旅行したその途中、こんどは弟の隆彦が内ゲバの報復を受けたことを知らされる。植物人間になった弟をかかえながら、多紀は新しい生命を身ごもるのだが…。光にあふれながらも静まりかえる京の白昼野にも似た孤独の現代に愛の可能性を探ったロマン。
「BOOKデータベース」より
京都の老舗の扇子商を女手ひとつで切り回す辻村多紀は、弟が内ゲバで殺してしまった学生の通夜で、その父親、柚木洋文と出会う。周囲の冷たい視線と母親の罵倒の中で、毅然としてかばってくれた柚木に、多紀は殺人事件の加害者と被害者の家族という関係をこえて引かれるものを感じる。それは28歳にして初めて多紀が知った恋であった。京の雅のなかに現代のロマンを刻んだ長編。
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