2007年の夏、カナダのバンクーバーにあるブリティッシュ・コロンビア大学で"国際伊勢物語ワークショップ"が開催された。このような国際学会が『伊勢物語』をテーマに開かれるのはおそらく初めてのことだが、二日間にわたっておこなわれた研究発表と討議はどれも興味深く、会場は終始、心地よい興奮と緊張に包まれていた。本論集は、大きな成果をあげたこの国際ワークショップの内容を多くの人々に共有してもらうために、当日の発表内容を中心に、他にも何本かの論文を収録して刊行するものである。ワークショップでの発表テーマは、『伊勢物語』の成立事情をめぐるもののほか、最近の世界的傾向を反映して、『伊勢物語』の享受の諸相、とりわけその絵画化に注目するものが多かったが、そこには、これまでにない新鮮な発想や視点があふれている。本書によってぜひ、従来知られることのなかった、新しい『伊勢物語』の姿を発見してほしい。
「BOOKデータベース」より