日本の中世・近世において「王」は、どのように感じられてきたのか。多くの絵画史料からその権力の歴史をひもとく。『後醍醐天皇像』中の冠・着物・道具から、後醍醐天皇が天子たることを強調しながら真言密教の菩薩像に似せて描かれていることを解き明かす。『江戸図屏風』に描かれた駿河大納言徳川忠長の屋敷門前の猿まわしの姿は、その後自刃する忠長の行く末を暗示していると考察する。天皇・将軍の肖像画から権威の表徴を明らかにし、風俗画に大名のお家事情を探る過程を、詳細に論述。先入観にとらわれず仔細に図像を分析し、興味深い史実を丹念に掘り起こした一冊。
「BOOKデータベース」より