18世紀半ば、啓蒙主義の影響下に新たな家族像の創出を夢見た女帝エカテリーナの時代に端を発した帝制期ロシアの女子教育。19世紀前半までに貴族特権として拡大を遂げたこの試みは、世紀中葉の農奴解放の時代="大改革の時代"に大きな転換点を迎えた。これ以降、近代世界最初の女性大学教授として知られる数学者ソフィア・コヴァレフスカヤをはじめいくたの女性たちの苦難の旅と、それを支援して専制的な帝制国家ともわたりあう社会の動向に力を得ながら、ロシアの女性たちの教育の場は他に例を見ない前進を遂げ、帝制末期には世界に冠たる巨大な女子教育システムにまで到達した。本書は、そうした歩みを、女性専門職者の世界にまで視野を広げて教育社会史的手法を用いて描く試みである。
「BOOKデータベース」より