一〇〇歳以上と見られる老尼を聴き手とした数人の女性達の語り合いという形式で、物語から歌集、そして女性へと論が展開される『無名草子』は、一二〇〇年ごろ俊成卿女によって作られたとする説が有力だが、王朝文化への憧憬と共に中世の"女"文化の始まりを予感させるテクストである。本書は五部構成をとり、本文には天理大学附属天理図書館蔵本を使用、脚注はことばの引用・類似関係や特異な語句を重視した。関連する平安〜鎌倉の物語評論二二編の注釈も併載。さらに解説、作中書名・人名事典や研究文献目録を付すなど、充実した内容を備える。
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