『アメリカの悲劇』の作者シオドア・ドライサーは一九世紀末から二〇世紀前半を生きたもっともアメリカ的な小説家だった。彼はドイツからの移民の子として貧困の中に育ち、自学自習で小説家としての成功を夢見て、苦労をしながら奮闘した人である。少年期から青年期まで、様々な職に就きながら、新聞記者、雑誌編集者を経て、念願の小説家となり、やがては当時の文学時流であった自然主義文学の代表的作品を世に問うまでとなった。晩年彼は必ずしも小説家として十全の時を送ることはできなかったが、ドライサーの生涯はまさに「アメリカの夢」を見、実現させようと努力した軌跡である。ここにアメリカに生きる男の典型があったと読者は感ずるはずである。
「BOOKデータベース」より