貨幣はその供給量や利子率の操作をつうじて、経済活動にどのような影響を及ぼすか。グランモンは、アレ=サミュエルソンの重複世代モデルの枠組みに一時的均衡の理論を導入することで、この問題を分析する独自の手法を確立した。本書はヒックス、パティンキンなどにより追究されてきたテーマに新たな視点から挑戦を試みた本格的な業績である。著者は、新古典派流の実質残高効果が通時的代替効果によって補強される必要があるとし、その条件として将来の価格や利子率に関する各主体の予想がある程度不感応的であらねばならないと説く。本書のもっとも重要な貢献は、その予想条件を貨幣的均衡存在のための基本条件として明確に位置づけ、反面インフレやデフレ時にはそれらの条件が満たされないところから均衡が保証されない事態がしばしば生じうることを明示した点に求められよう。
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