復権を果たした金達玄。しかし、改革解放派の彼の地位はまだ危うい。特に、金正日の側近であり、対南・対日工作の元締めである国家保安部-三号庁舎を仕切る金容淳との関係は悪化する一方であった。折しも、北朝鮮のミサイル発射事件を巡り、日本国内では北朝鮮に対する感情的世論が沸き起こっていた。そんな時、三号庁舎の工作員で、スーパーK(北朝鮮製の偽ドル札)工作にかかわっていた男が、ソウルでの壮絶な銃撃戦の末、逃亡する。男には任務のため潜入していた日本と、祖国である北朝鮮にそれぞれ妻子がいた。アメリカ国防省の情報組織、通称"会社"は人的情報収集活動(ヒューミント)のプロ葉山を男と接触させ、司法取引をさせようともくろむ。ふたつの家族のどちらかを選べば、もうひとつは破滅する。苦悩する男の下した究極の選択とは。
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