本書では、植物の特質の1つである非生物的成育環境の変化に対する応答の分子機構を解説することを試みた。これまでこの分野の研究は、ストレスへの応答あるいは耐性機構の側面が強調されてきたが、ごく日常的に変化する環境の中で植物にはどのようなことが起こっているのか、そしてこのシリーズとしては異色ではあるが、マクロなレベルでの環境に対する応答現象についても多少の解説を加えた。これは、個体の生存戦略における環境への応答、個体と個体の間の相互作用の法則性を明らかにする植物生態学で取り扱われてきた問題の一部が、本書のテーマと重なるためである。
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