「偉大な体系家ヘーゲル」のイメージが音を立てて崩れつつある。生前に刊行された書物はわずか四冊、しかし死後に弟子たちによって編集された全集は膨大なものとなった。編者たちは体系家ヘーゲルを実現するため、聴講生による聴講録や遺稿を駆使して工夫を凝らした結果、多くの改竄を生み出した。ヘーゲル解釈はこれら古いテクストに依拠してきたが、本書は新しい全集版と講義録の刊行を踏まえて、同時代との対決による影響作用史のなかでヘーゲル哲学の形成史をたどり、体系の完成よりは新たな経験的素材の導入や時代との対応を重視して死の直前まで独創的な発想を生み続けて格闘した、思想家ヘーゲルの生きた真実に迫る。付録の講義一覧は講義録が重視される中で貴重な資料となろう。
「BOOKデータベース」より