不可解なその病態ゆえに臨床家を惹きつけてやまない、精神分裂病。分裂病者の治療は生物学的アプローチが昨今さかんであるが、その方法は精神不在の精神医学であるとの批判を免れない。本書で著者は、二十年余にわたる臨床の場における病者との出会いの経験を拠り所として、分裂病の経過と寛解の過程を吟味し、経時的理解を押し進めることを試みた。分裂病の軽症化を究めるためにはグリージンガーのマニー・メランコリー論へ遡り、病態を構造的に捉えるために、ヤンツァーリクとラカンの統合をはかる。こうして著者は、ヤンツァーリクとラカンを臨床経験の場に定位し、相互受胎させて、新たな構造力動論を提示してみせる。
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