変貌を遂げるメキコ経済において近年注目されるのは、民族系大企業の台頭である。対外債務の累積、経済不況、市場開放による競争の激化等々、企業をめぐる経済環境は厳しい。にもかかわらず民族系大企業は、対外債務返済交渉をしたたかに乗り切り、大規模なリストラの断行により国際競争力を向上させ、民営化政策の好機を捉えて有力公企業を傘下に取り込み、着実な発展を遂げているのである。このような民族系大企業の台頭がなぜ可能となったのか。民族系大企業の力強い成長-そしておそらくはその限界-の背後にある成長の論理を解き明かすこと、それが本書のねらいである。しかし、本書が対象とするのは主に1980年代より以前の時期までである。あえてこのように対象時期を設定する理由は、民族系大企業の台頭を可能にした企業の側における条件が、経済改革が実施される以前の成長過程において醸成されたと考えるためである。
「BOOKデータベース」より