1900年1月。イタリアはヴェローナの川で、切り刻まれた死体の一部が見つかった。それは、エリート将校の子を身ごもり、結婚を夢見ていたイゾリーナの無残な姿だった。まもなく恋人の将校が逮捕されるが、複数の軍人の関与が露顕しはじめるや、証拠不十分で釈放される。将来たちがふざけ半分の堕胎によってイゾリーナを死にいたらしめ、証拠隠滅をはかった-しだいに明らかになる真相も、軍の圧力でもみ消されてゆく。司法も報道も、少女の味方にはならなかった。イゾリーナは「ふしだらな女」の烙印を押されたまま、放りだされた。マライーニは、新聞報道と関係者遺族への聞き取りをもとに、闇に葬られた猟奇的殺人事件を掘り起こす。墓もない少女の、踏みにじられた尊厳を回復させる鎮塊の書。
「BOOKデータベース」より