インカ帝国の版図の北限に位置する、現コロンビア南部のシブンドイ渓谷。そこに住む先住民は、1535年、黄金の地「エル・ドラード」を求めてここまで進んできたスペイン人と運命的な出会いをする。やがてこの地に「君臨する」カトリック・カプチン宣教会。神の名の下に、教会は、脅迫と術策を弄して肥沃な先住民の土地を奪い、彼らの文化を破壊していく。のちにゲリラ兵士となった神父カミロ・トレスが「シブンドイ…それは教会が経済的・政治的権力の誘惑に屈した古典的一例である」とまで評した衝撃的な物語をコロンビアの一社会学者が丹念に描ききった労作。1968年初版刊行直後からカトリック世界に深刻な動揺を与え続けている本書は<解放の神学>をめぐる論議がようやく盛んになってきた日本にも深い影響を及ぼそう。
「BOOKデータベース」より