科学の歴史を発見物語の連鎖と考え、われわれはそこに科学の魅力的なドラマを見出してきた。しかしいったい発見とは何か。例えば学習、模倣等といかに区別されるのか。従来の天才説、クーン、ハンソン等のゲシュタルト転換説は発見の存在を自明のこととしているのでこれに答えられないとして、著者は社会的文脈に焦点を当て、ある出来事がそもそもどのようにして発見に仕立て上げられるかを追求しようとする。メンデルは再発見されたのか、アメリカを発見したのは誰か、人類史の謎を埋めるピルトダウン人の真偽は…。科学史上の著名な事例を題材に、さながら推理小説を読むように、「発見としての身分」がいかに変化したかを説き明かしていく。そして結局、発見とは、われわれが世界を理解する際に用いる方法であり、解釈行為なのだと主張する。現象学的社会学、エスノメソドロジーの手法により、発見をラディカルに問い直した著。
「BOOKデータベース」より