美しく編まれた書物のなかで、言葉と人格に導かれながら旅をするくらい愉快なことがあるだろうか。若く、快活で繊細で物識りの、皮肉屋のスティヴンスンと、「一種のロールパンかソーセイジといった」様子に見えるスリーピング・バッグ、それに「鼠色の優しい眼と決断力の強そうな下顎をもった小柄の」「小ざっぱりとした、お上品な、普連土教徒風の優雅さ」のある牝驢馬モデスチン。私はそこに加わって、十二日間の旅をした。1878年秋、28歳のスティヴンスンはちいさな驢馬をつれ、南仏の山々を抜ける旅に出た。生きる歓びに満ちた、この愛すべき旅行記の名訳が半世紀ぶりに甦る。同時収録「ギタア異聞」。
「BOOKデータベース」より