本論考の特徴は、『デカルト的省察』を一つの完結した全体として読み解くことである。全集第一巻に収録された『デカカルト的省察』は、フッサールがほぼ二カ月で一気に書き上げ、ひとまず完結した著作と認めたものであり、むしろその思索のまとまりがフッサールの意図の一貫性を明瞭に示していると判断するからである。本書の執筆に当たって自らに課したのは、自分の解釈に都合の悪い部分を素通りする逃避を自分に禁じて、ともかくこの著作全体を貫くフッサールの意図を確定することであった。改めて確認できたのは、フッサールは驚くほど綱領的に一貫しており、しかも他の著作とも整合的に思索している、ということである。本書の題を少々大仰に『フッサール現象学の理路』とした所以である。
「BOOKデータベース」より