宗教は多様な側面をもっている。それは自己の実存に関わるものであるが、しかし単なる内面の事柄ではなく、同時に表現や行為でもある。他者への、あるいは社会への関わりをその内に含む。また死生観や世界観という側面をももつ。そして実際の宗教現象もまた、きわめて多様である。そのように多様な面をもつ宗教を学問の対象にすることは、必ずしも容易ではない。しかしその多面性が、逆にそれをより興味深いものにもしている。本書では、できるだけ多くの方面から光を当て、その興味深さを引き出してみたいと考えた。そのために、各章でそれぞれの観点から宗教がどのように見えるか、どのように捉えられるかをまず概説することを試みた。しかし概観するだけでなく、現代という視点から宗教を見た場合に、重要かつアクチュアルな意味をもつ点について、別に項目を立てて詳しい解説を行うようにした。その点に本書の特徴がある。
「BOOKデータベース」より